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薬剤師ネクスト経営塾

薬局のマーケティングを考える ③

こんにちは、仁成堂薬局の大谷です
今回はマーケティングについての3回目。「4P」について書いていきたいと思います。
薬局の経営資源のうち何が強みなのか、誰に伝えると見返りが大きいのかを整理するのが前回、前々回のコラムで書いたことでした。そして、その魅力を相手に伝えるという部分のフレームワークが「4P」です
ただ内容は、当初の予定を一部(かなり?)変更しました。今回の調剤報酬改訂を踏まえた、今後の薬局の方向性についての記載が増えています。内容も私見・予想・疑問などがちょくちょく入っていますが、書き手の私もこの時期は悩みがつきません。ご了承ください

「4P」とは

「マーケティング」イコール「4P」という位、有名な単語です。
商品やサービスの強みをターゲットのセグメントにアピールし、きちんとした結果を出すための考え方の一つです。製品(product)、価格(price)、流通経路(place)、広告販促(promotion)の4つの視点から考えるようになっており、それぞれを意味する英単語の頭文字をとり「4P」と呼ばれています。

1)製品(product)について
用意する商品、サービスのことです。重要なのは、「今ある商品、サービスをどうやって売り込もう、宣伝しようか?」と考えるのではなく、「お客さんが価値を感じる商品、サービスは何なのか?どんな商品、サービスを提供すべきなのか?」の視点で考えます
考えるポイント:製品、品質、デザイン、ブランドなど

2)価格(price)について
商品の価格についてです。いくら商品やサービスの品質が良くても、価格が高すぎたり、あるいは逆に安すぎても、売上は思うほど伸びないと言われています。
一般的には「適正価格=原価+利益」で考えられますが、お客さんのコストは直接的な金銭以外のことも考えた方が好ましい結果になりやすいです
考えるポイント:販売価格、割引など

3)流通経路(place)について
その商品、サービスの販売場所についてです。どの流通経路を通して、どのように売るべきか?お店の立地、スーパーでの売り場の確保など場所に関すること以外にも、商品の品揃えや消費者に届くまでの流通経路の選び方も含まれます。「どうすれば顧客の利便性があがるのか?」という視点が大切と言われています。
考えるポイント:流通経路、流通範囲、品揃え、店舗立地、在庫、輸送など

4)広告販促(promotion)について
その商品、サービスをどのようにして顧客に知ってもらうかについてです。テレビや新聞を使ったマス広告、チラシやPOPなどのプロモーション手段、マスコミを利用した広報活動、ネットや電話を使った販促活動など色んな方法がありますが、大切なのは「対象とするセグメントに、一番効率よくメッセージを伝える方法がなんなのか?」です
考えるポイント:宣伝、広告、パブリシティー、人的販売、口コミ誘導、POP、イベント、キャンペーンなど

実際に今回の改定を踏まえて調剤薬局の置かれた状況を使って自分なりに整理してみます。

今回の改訂では、昨年10月に発表されている「患者のための薬局ビジョン」の影響が色濃く出ています。そして、この流れは今後しばらくの間は続くと思われるため、保険調剤に依存している私たちの調剤薬局は「地域の役に立つ存在になる」という目的を達成することで、このビジョンに到達することが目標となります。

因果を繋げる思考と今の調剤薬局の課題

こういった大きな問題を考えるとき、私は次のフレームワークを使うようにしています。闇雲に考えても頭が混乱して、自分がなにを考えているのかが分からなくなるからです。なので今回もこれをベースに話を進めていきます。

とはいえ大したことがありません。自分がいま考えている事が「原因→問題→課題→対応策→結果→効果」のどの部分に当てはまることなのか?を意識するだけのことです

例えば、商品の価格が高すぎて売り上げが低迷して赤字になっているお店があるとします。
この場合の、黒字化を目標にした場合対応策について考えるとこんな感じになります。

売上が低迷しているお店の場合
目標:黒字化

原因 問題 課題 対応策 結果 効果
販売戸数低迷
客単価低迷
売上が低迷 売上向上 価格見直し 販売個数UP
客単価上昇
売上回復し、目標達成

売上低迷という問題を解決するためには、その原因を把握し、それに合った対応策をとる。という一連の流れが把握できると思います。これを今の調剤薬局の置かれた状況であらわすとこんな感じになると思います。

今の調剤薬局の課題と対策
目標:かかりつけ薬局・薬剤師化
   健康サポート機能(健康サポート薬局)

原因 ・広告宣伝をしていない
・調剤の収益性が高かった
・OTCを置く必要性が乏しかった
・薬剤師による収益の差が乏しかった
・顧客関係性が希薄だった
問題 ・かかりつけ薬局として認知されていない
・商品・サービスが揃っていない
・かかりつけ薬局の価値が伝えられていない(受け入れられていない)
課題 ①かかりつけ薬局としての認知度向上
②商品・サービスの品揃えと質の向上
③かかりつけ薬局の価値を伝える(受け入れてもらう)
対策 ・①②③それぞれについて4Pの視点で考え、行動する
・問題の原因に沿った対策を心掛ける
結果 ・売上における調剤の比率が調剤6:その他4 程度になる
・調剤以外にも、予防・軽医療・介護・在宅までの必要な商品と情報が提供できている
・かかりつけ薬剤師が充足している
・なじみのお客さんが増え、顧客関係性が高まる
効果 ・かかりつけ薬局としての認知度が高まる
・かかりつけ薬局にふさわしい商品。サービスの品揃えの実現
・かかりつけ薬局のメリットを実感できている人が増える

つまり、私たちの調剤薬局は「かかりつけ薬局になる」という目標達成のために、次の3つの課題を「4P」を使って解決していく必要があるといえます。

①かかりつけ薬局としての認知度向上
②商品・サービスの品揃えと質の向上
③かかりつけ薬局の価値を伝える(受け入れてもらう)

先程説明したように4Pは「商品やサービスの強みをターゲットのセグメントにアピールするため」に使うので改めて薬局の商品・サービス、強み、ターゲットセグメントを整理してみました。

かかりつけ薬局の商品・強み・ターゲット

<かかりつけ薬局(+健康サポート薬局)の商品>

・医療用医薬品(含むジェネリック医薬品)
・一般用医薬品、衛生用品
・地域の健康、疾患に関する情報(花粉症の飛散量や、インフルエンザの流行状況など)
・地域の各種相談窓口に関する情報(育児、自殺予防、介護関係など)
・地域の医療機関に関する情報
・かかりつけ薬剤師をはじめとした店舗スタッフ
・お薬相談会や健康教室などの情報を伝えるためのコンテンツなど

<かかりつけ薬局(+健康サポート薬局)の強み>

・かかりつけ薬剤師による服薬情報の一元的・持続的把握
・24時間対応、在宅対応
・軽医療・予防の段階からのかかりつけ薬剤師の適切な介入


<薬局のターゲット>

・薬局近隣の地域住民および医療・介護の関係者、(国・市町村などの行政も?)

では、改めて先程の3つの課題を「4P」の視点でみると次のように考えることができます。

課題 特に考えるべき「4P」の視点
①かかりつけ薬局としての認知度向上 広告宣伝(promotion)
②商品・サービスの品ぞろえと質の向上 製品(product)価格(price)流通経路(place)
③かかりつけ薬局の価値を伝える 製品(product)価格(price)流通経路(place)

課題解決のための対応策について

製品(product)

医薬品の質は同じなので、薬剤師の質が問われる。具体的にはコミュニケーション能力・専門性の高さ。それに、身だしなみ、言葉遣いなども大切になってくる。また、薬剤師以外のスタッフのレベルが高くなれば、薬剤師がより高度なサービスに集中でき、結果として薬局サービスの品質の向上につながる。そのためレベルの高い薬剤師、店舗スタッフを採用するのはもちろん大切だが、社内の教育体制を整えることも重要になってくる。中小企業の場合は、大手のようにお金をかけることができないので、ネットの活用や、近隣薬局との協力体制の構築などの工夫が必要。
そして、保険調剤以外の収益をどうやって作るかに真剣に取り組む必要がある。OTCや健康食品でそれを補う売上が確保できるのだろうか?薬局がなにを扱うか?ではなく、地域の人がどんな商品、サービスを求めているか?薬局が取り扱うことで差別化ができる商品、サービスはないだろうか?そういった発想の転換が必要なのかもしれない。
情報コンテンツは、顧客が必要としているときに適切に提供することが重要である。いくら地域に密着した情報でも、顧客が必要としていないときはその情報に価値はない。

価格(price)

医療用医薬品とそれ以外に分けて考える。医療用医薬品の場合、価格は同じ。価値を出すために算定要件以上の手間をかけ加算を取らないことは慎むこと。スタッフのかけた手間暇をタダで挙げることはブラック職場のスタート。それよりも、顧客の手間や時間的なコスト、心理的な負担を下げ、気持ちよくサービスを受けられるといった価値を上げることで相対的なコストを下げること。まずはこれを考えるべき。
そして、保険調剤以外の部分。誰もが欲しいと感じるような「理想的な価格」ではなく、少し高いが価値に見合った「妥協できる価格」を目指す。低価格で高品質な商品を理想と感じるのは当然だが、反面「低価格=低品質」と感じてしまう顧客も存在する。何より価格競争をしては、大型店には絶対勝てない。勿論例外は存在する。でもどうすればその商品を定価販売できるのか?それを考えることが健全。

流通経路(place)

OTCの品揃え、備蓄医薬品数などでは大手に勝てない。ネット販売も同じ。薬局の立地を十分考慮して、近隣に住んでいる人の欲しいもの、欲しいサービスを集中的に用意することを心掛ける。またOTCはその仕入先の選定も大切である。小ロット販売、返品、棚割り提案などに対応できるところはないか?
在宅調剤や24時間対応も顧客の利便性が高まるサービスの一つだが、薬剤師数、薬剤師の時給、薬局からの距離、件数などを十分考慮すること。費用対効果、現場の疲弊度によっては他の薬局を紹介したり、サポート薬局制度を積極的に活用することも選択肢の一つ。
お薬相談会や健康教室などコンテンツは大手との差別化に有効な可能性がある。種類を増やすこと、積極的に地域の集まりなどに出向いて展開することがポイントだが、これと収益をどう結び付けるのか?

広告宣伝(promotion)

お金をかけるより、手間をかける。狭い範囲に集中的、確実に伝える方法を考える。テレビ広告、ラジオ宣伝よりも、回覧板を使って近所の人に知らせたり、チラシをつくって、ケアマネさん、民生委員さん、老人クラブなどに紹介した方が効果を期待できる。
POP、ウエルカムボード、試食会、スタッフの商品説明など、店内でのプロモーション活動も有効。またイベントなど集客が必要な場合も近隣の薬局と共同開催にすればクリアできることもある。
またイベントにも手間暇がかかっている。惰性で行っているイベントはやめ、より反響の期待できるものに変えるべきだ。

そして、これら「4P」の視点で考えた対応策を積み重ねることで期待される結果が表れ、課題①②③が解決し、かかりつけ薬局になることができます。

まとめ

と、以上が所謂マーケティングの基本的な流れです。ここまで書いてはいますが、じゃあ具体的にどうすればいいのか?と言われると私も正しい回答はわかりません。例えば調剤以外の売上の4割は具体的になんなのか?とか聞かれても答えられません。それに、4Pの各対応策があっているのかもわかりません。方向性を考え、なるべく誤った方向にいかないようにするのがフレームワークの限界であり、正解かどうかは実際の現場で行動してみないとわかりません。

なんだ正解がわかるわけじゃないのか?役に立たないなぁ。とか、やって失敗したらどうしてくれるんだ!とか思う人もいるかと思います。でも、不思議なもので失敗を避け、確実に成功することだけを続けていても、思い通りの結果にならないことってありませんか?逆に外から見ていると失敗を繰り返している人が、いつの間にか大きく成長していることってありませんか?
大切なのは、致命的な失敗を避けつつ、アクションを繰り返すことではないでしょうか?マーケティングの考え方は、そのアクションの精度と回数を増やすのにとても有効だと思います。

2025年、すべての薬局がかかりつけ薬局になる。ただし薬局の数は今の半分。

この話を聞いて「うちの薬局は平均より上だから大丈夫だろう。」とか思っていませんか?
単純に考えても半分に減った薬局で平均を獲得するには、今の上位25%に入っている必要があります。当然2025年までには他業種の参入もあるだろうし、ドラックストアも益々調剤に力を入れてきます。そうすると、2025年を自信をもって迎えるには今のうちから、かなりの上位を目指す必要があるのではないでしょうか?具体的に言えばそれは地域一番店と言われるような状態だと思います。だから他がしてるからうちの薬局もやろう!とか、他はそこまでやってないからやらなくていいよ。とか地域の同業を目指していては到達できません。他がやってないからやろう。他がここまでだからうちはこの位を目指そう!そういう気持ちでやっていく必要があるんだと思います。

「問題は頭で作られ行動で解決する。」

今こそこの言葉を実行するときではないでしょうか?
4月まであと少し、皆さん一緒に頑張っていきましょう!そして、私たち薬剤師が考える「かかりつけ薬局」が堂々と発表できるような環境を作っていきましょう!

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